こんにちは(^-^)。
当院では高齢者の認知症の状態(長期記憶)を知るために、戦前のすべての学校に設置されていた奉安殿(ブログ『訪問診療とアルバム』参照)や、学校で暗記していた歴代の天皇陛下のお名前など、その時代で印象深いエピソードを伺うことがあります。これは長期記憶の確認のみならず、私たち医療者や同伴されている家族とのコミュニケーションの構築にもとても役立つものであり、当院の病棟では三重町を中心に昔懐かしい大分県の風景の写真を拡大したパネルを展示して、患者さんの憩いや御家族とのコミュニケーションツールとして利用してもらっています。
ところで、私の世代(40歳代)から50歳代までの少し若い世代で、上記のような話題はないかな~と思っていたのですが、先日出席した同窓会で、大分12郡の覚え方の話題が出て、みんな30年ぶりくらいに思い出して一斉に斉唱して心地よかった(脳が活性化されて大脳皮質などの血流が増えた^^?)、のでご紹介します。
『東西南北宇佐下毛、速見て通るは大分郡、大野直入、玖珠日(ッ)田』(読み方:とうざいなんぼくうさしもげ。はやみてとおるはおおいたぐん。おおのなおいりくすひった。初めから順に、東国東郡、西国東郡、南海部郡、北海部郡、宇佐郡、下毛郡、速見郡、大分郡、大野郡、直入郡、玖珠郡、日田郡、です。冒頭の「東西南北宇佐下毛」の部分は、十返舎一九の小説『東海道中膝栗毛』の韻を踏んでいて、楽しいですね!)
最後の「くすひった」は玖珠と日田の方々には申し訳ないのですが、ユーモアを含めた楽しい語呂合わせは印象に強く残っています。もちろん、同年代でもこの語呂合わせを習っていない方はおられるでしょう。このような『回想療法(ブログ「健康教室を開催しています。その2」をご参照ください)』はかなり個別的なものであり、全ての人に当てはまるものではありません。このため、回想療法を行う医療者は、医学的知識だけでなく、郷土史や地理など幅広い知識の集積が必要です。
なお、今では大分県の郡は平成の市町村合併でほとんど消滅したので、現在の子供たちが大分12郡を覚えることはないと思いますが、奈良時代以降の大分の歴史を学ぶときに郡の名前は重要になります。興味がある学生さんはこの語呂合わせで楽しく覚えてほしいと思います(^^)/ 。
文:森本(国立長寿医療研究センター認定認知症サポート医・オレンジドクター)