こんにちは。今日は久しぶりの「大分のタイムカメラ」として、豊後大野市にある沈堕の滝に設置された水力発電所が稼働していた頃の写真を紹介します。
室町時代に雪舟が描いたことでも有名な『沈堕の滝』は、その豊かな水量を利用して明治42年(1909年)4月に水力発電所(沈堕発電所)が作られました。上の写真は明治末期から大正にかけての絵葉書ですが、滝から引いた水が、写真右側の水路を通って発電所内のタービンを廻して発電する仕組みとなっていました。発電所が完成した当時は、500キロワット発電機2台を持つ最新鋭の設備であり、2万2000ボルトの送電線から大分町(現在の大分市中心部)に電力供給を行い、初めて大分町に電灯が灯りました。また、大分~別府間を走る豊州電気鉄道(九州初の市電で、後の大分交通別大線)にも安定した電力を供給しました。
さらに明治42年(1909年)11月からは、大野郡(現在の豊後大野市)の三重町、東大野村(現 大野町)、牧口村(現 清川町)、大分郡(現 大分市)の東大分村、日岡村、桃園村、三佐村、八幡村にも送電を開始します。それまで危険で取り扱いが面倒だったランプの生活から解放され、安全で便利な電灯を使えるようになった当時の人々の喜びは大きく、「ひとりでに灯がついて、ランプの何倍も明るい!」「風が吹いても消える心配がない!」というような新鮮な驚きがあったそうです。
下の写真のように、今では発電所は建物の外壁や骨格を残すだけの廃墟となっていますが、豊後大野市のジオパークの拠点の一つとして、観光客で賑わっています。こうして新旧の写真を比べてみると、発電所が稼働していた時代も、今もそれぞれに風情のある景観ですね。。。
(文:森本)
参考文献:高橋眞澄『大分文庫⑥ 大分の電力史』アドバンス大分 1981年